記事一覧

特報/資源開発をめぐる掃討作戦なのか?~ロヒンニャ危機の背景を考える

   ミャンマー(ビルマ)の政府・治安部隊の大規模方位・掃討作戦によって8月下旬から、未曾有の急激な難民流出が起きている少数派のムスリムであるロヒンニャの人々が、隣接するバングラデシュで40万人を超える。UN国連はこの事態を、「民族絶滅 ethnic cleansing」と強く非難し、人権理事会が声明を出すとともに、UN人権高等弁務官は安全保障理事会にも人道危機に対処するよう要請した。国を追われたロヒンニャの人々とほぼ同数の三十数万通筆の署名が世界中から、ミャンマーの実質的な政府代表であるアウン・サン・スーチー国家顧問兼各種国務大臣が事態に介入しないため、彼女が1991年に受賞したノーベル平和賞を剥奪するよう要求が突きつけられている。かつてノーベル平和賞を受けた南アフリカの聖公会ツツ元大主教、パキスタンで投稿中に銃撃されたマララ・ユスフザイさんらも、スーチー顧問に厳しい批判を寄せている。なぜスーチーは、これほどあからさまな人権侵害・人道に対する暴力犯罪に無言を貫くのだろうか。軍部と、民主化勢力との微妙な均衡が政治的基盤を不安定にしているのは事実だが、何かもっと確かな理由があるのではないかとも思われる。【9月17日東京=からしだねプレス】
 

ロヒンニャの人々は、ミャンマーの長い歴史の中で、バングラデシュに接する北西部ラカイン県に、他の少数派の人々もろとも、軍事政権によって、封じ込められてきた。さらに民政移管後も、つまりスーチー政権になっても、機関銃や対人地雷や空爆によって、治安部隊による軍事的迫害を散発的に受け続けてきた。
 2016年秋から、村落丸ごとの襲撃・焼き払い・略奪・暴行・レイプ・惨殺などが激化して、国際人権団体などが警鐘を鳴らしてきた。
 このラカイン県で、8月25日から、過去最悪の徹底した「民族絶滅掃討作戦が始まったのである。ラカイン県のロヒンニャ110万人のうちの、すでに40万人が国境を超えて、バングラデシュに逃げ込んでいる。ロヒンニャが少数派、ではある者の、ミャンマーが人口5千万人と言われるので、少なくとも全人口の2%以上は占めているのである。


 からしだねプレスは、ミャンマー情勢を調べる中で、注目すべき一つの経済トピックを見つけた。これがロヒンニャ危機に直結するとまでいえる根拠はないが、「スーチーの静観」と何らかの因果性のある背景を推測することはできる。

 8月7日に発表されたところによれば、オーストラリアのガス採掘企業、ウエストサイド・エナジー社は、ミャンマーにおける開発事業で、ラカイン県の西岸地下で、豊富な天然ガス田を試掘し、その有望性を確認した。ウエストサイド・エナジー社のニュースリリースによれば、数年に及ぶガス脈の探索と、さまざまな試掘プロセスを経て、このラカイン西岸のガス田が大規模で高い採算性を見込めること、現地との資本合弁で、ミャンマー経済にも十分に還元できる利益であることが強調されている。

 また、これを裏付ける情報として、9月5日付けのJETRO日本貿易振興会がウエストサイド・エナジー社のガス田開発を伝えている。それによると、ミャンマーは、豊富な天然ガス資源をすでに採掘・算出している。しかし、その大部分が輸出されて外貨獲得の手段となっている。
 一方で、ミャンマー国内において、エネルギー供給事情がいまだに低く電力不足その他で、経済発展の足かせとなっている。新たなラカイン県のガス田は、国内エネルギー供給を安定化させるものと期待されている、と伝えている。


 だからといって、ラカイン県からロヒンニャの人々を追い立てるべき理由にはならない。
 ただし、ラカイン県の「西岸」なる部分が問題で、ベンガル湾に注ぐ河川(イラワジ河の支流が、バングラデシュとの国境線である。したがって、地下鉱物資源をめぐって、ミャンマー政府は隣国バングラデシュを意識しながら開発を急ぐべき権益なのである。
 ガス田開発は、各地で権益をめぐる国境問題を引き起こす。ラカイン西岸の場合ミャンマーにとって隣接するバングラデシュがムスリム多数のイスラム政権国家であること、ベンガル湾をはさんであるいはや北辺インド対峙していることなど、ミャンマー国内において、少数のムスリムやベンガル系と見なされるロヒンニャをラカイン県に封じ込めてきたことが、不都合になる背景要素になってしまっているのではないか。


 なお、オーストラリアだけでなく、欧米や中国系の企業に加えて、スーチー政権が実現してUN経済制裁が解除された2011年から、日本企業も中国の6分の1ともいわれる安い労働者の賃金を見込んで経済進出を続けている。最大都市に、ヤンゴン日本人商工会議所があったが、今では全土に進出企業が広がり、2016年にはミャンマー日本商工会議所に改称した。
 これら、スーチー政権を支える各国の経済進出が、決してロヒンニャ危機を招くような、秩序のない開発競争にならないよう、企業のコンプライアンスと、国際機関の監視が中期的に不可欠であろう。

■)
関連記事
スポンサーサイト