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『からしだね!』ヒストリー(1)

  独りであること、未熟であること、
  それが私の二十歳の原点である。
     ———高野悦子著『二十歳の原点』(新潮文庫・1979年刊)

    


1969年1月2日に、二十歳の誕生日を迎えた高野悦子は、同月15日の「成人の日」に、この一節を自らの思いを言葉に綴る大学ノートに、みずみずしく自己分析している。この二十歳の煩悶と飛翔と恋愛と挫折を、みごとにペンに託して書き続けた。同年6月20日、「旅に出よう」の詩を最後にノートは終わり、その二日後に彼女は自らの命を絶ったのである。
 彼女の死後に下宿から家族が発見した大学ノートが父親によって原稿となり、1971年に新潮社から刊行されて大きな反響を呼ぶ。今も、研ぎ澄まされた若い感性を読み解く人々に支持されているロングセラーである。

 コミュニケーション・ペーパー『からしだね!』(B5判8ページ)を創刊したのが1986年4月。それは、故郷を離れて、東京に出てきた心細くも新鮮な私なりの、いわば「二十歳の原点」だったのかもしれない。高のと私の違いは、旅には出た者の、転がり、もみくちゃにされ、泥水をすすり、かつぎあげられてはハシゴをはずされ、屋根から落ち、満身創痍でそれでも、まだ生きていることだろうか。
 けれど、独りであること、未熟であること、それは、何十年過ぎても、やはり私の原点である。

 『からしだね!』紙が、時代と世界を見つめる『地平』という総合誌に変わっても、あるいはそれらもすたれて、インターネットでの電子発信が主流になっても、結局、あの若い日に立てたコミュニケーションにに携わり続ける思いは、まるで色あせていない。

 からしだねプレスは、私の二十歳の原点そのままである。
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