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教界ニュース/教皇が典礼式文翻訳で地方教会に権限を大幅譲歩

 【9月10日・東京=からしだねプレス】バチカン関係筋によると、カトリック教会の主要な典礼であるミサ聖祭をはじめ、典礼式文の現代的刷新の必要性を説く教皇フランシスコは、典礼所翻訳のありかたを検討している専門委員会の中間的な討議を参考に、新しい典礼所翻訳の指針策定を進めると明らかにした。
 この中で重要なのは、使徒座(カトリック教会統治機構の中核であるローマの教皇権)が典礼所・式文をラテン語・英語で定めて、それらを厳密狭義に各国語に翻訳して用いてきた従来の方法を抜本的に見直すことである。新しい方式では、使徒座(ローマ)と、地方教会の牧者である各国司教協議会とで、原則確認を密に行いながらも、各国司教協議会のイニシアチブ(主導)のもとで、各地方の文化・社会的背景や特色を、使徒座の示す原則に照らして、典礼の意義を撚り深める翻訳をカトリック教会の典礼所として定めるように改める。その変革に伴って、手続きを改め、必要ならば教会法典をも改定することである。
 教皇フランシスコは、第二バチカン教会会議で提唱された「典礼の刷新を不断に続けていく教会」なる典礼憲章が発布されて五十年を過ぎ、今なお教会は、もっともっと広く世界のあらゆる人々が主体的に参与できるものへと「刷新」は続けられるべきであると、その意義を述べる。ローマから一言一句をもラテン語と相違なく典礼所を翻訳することで権威を保てるのではなく、ローマと各国司教協議会が一体不可分の典礼の意義を持ちつつ、典礼所の翻訳を「地方分権化していく」ことが、生き生きとした典礼が続けられていくことになる、といくつかの分署でも、その役割を説いている。
 すでに、2017年初頭に、典礼所の英語翻訳に関して、抜本的改革を検討する専門家委員会に、教皇はこの改革方針を持って諮問している。翻訳の地方分権化について、必要な執筆翻訳ガイドラインもすでに提示されてきた。
 今回の教皇が明言した、地方分権化、つまり各国司教協議会の典礼所策定の部分権限移譲は、その明確な手段の提示となった。第二バチカン教会会議が告げたカトリックの教会刷新の方向性が踏襲されていること、さりとてまだ刷新は道半ばであり、「世界とともに地上を旅するキリストの教会」のイメージを体現するものである。

◆用語解説:

使徒座(しと・ざ)
 教会の統治機構の中核となるカトリックにおいて、ローマ教皇に授けられている権能と務めを指す。あるいは、それを具現化する直接の組織であるローマ教皇庁のこと。
 20世紀になって、国際法上の独立主権国家となった教皇庁(通商・ヴァティカン・シティ・ステイト)は外交・内政の政治的性格をも担当する官僚組織となり、現在も、UN(国連)や国際会議に教皇代理、各国駐在大使、教皇庁国務長官などが、登場する。
それら社会・政治的な諸側面とは関連しない、教会の信仰やそれに付随する事柄である本来的(聖書に依拠する)教皇と教皇庁の働きだけを意として、「使徒座 the Apostolic See 」、が教皇の側からも信徒の側からも、頻繁に使われるようになった。

 キリストが十二弟子 the 12 Apostoles を選び、そのリーダーにペトロを任命した。初期きりすと教会、そしていろんな分断を経て現在まで続くカトリック(不変の)教会は、そのペトロが委ねられた使徒たちの長である務めを、後継する者を Papa 教父=教皇=と呼び、現代まで選び続けている。
 リーダーがいるからには、その指導を仰ぎ、リーダーに忠誠を約する使徒たちが世界中にいる。ペトロ以外のキリストが選んだ弟子たちの後継者としての務めを担うのが、教皇以外の大司教・司教たちである、という理解が、カトリック教会にはある。これらは、キリストが直接に選びたくした使徒の務めとして明白だから、弟子たちの「後継者の一団」を形成している。そのいわば使徒団のリーダーたる教皇だけが着座する席は、ローマ・ヴァティカン丘陵に葬られた聖ペトロの殉教墓の上に献堂された聖ペトロ大聖堂(サン・ピエトロ・バジリカ)なのである。
 その使徒団の長が座る席をもともとは「使徒座」と呼ぶのである。転じて、教皇の権能と務めを象徴する座席になった。

 教皇は、使徒団の中から、自らの死後の次の教皇選挙会のメンバーである枢機卿 Cardinals (全120名・終身地位だが万80歳を超えると選挙権のない名誉職)の欠員を選任する。枢機卿は、大司教・司教の中から選ばれる。大司教・司教は、教皇が任命し、使徒団がこれを叙階(按手礼で承認祝福)する(大司教・司教は終身制、ただし満80歳をもって職責を説かれ引退することが多い)。教皇の永眠・または退位の際は、枢機卿の中から、互選で、新教皇が選ばれる。
 つまり、教会統治機構の中で、使徒団とも呼ぶべき人々は、強い一体性を発揮できる叙任システムに支えられ、権限移譲が不用意に分裂の種にはならないような裏付けがあると言える。

(隆)
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